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期間限定販売対象商品
2021年7月30日9時0分~2025年2月28日23時59分
残り 39日 9時間 42分
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東京都によると、並木のイチョウ百四十六本のうち約七割を雌株が占める。雌株の前のベンチに座っていた台東区の六十代、和田玲子さんは「雌はギンナンが下に落ちているから分かります。時々、ギンナン拾いに来ている人がいますよ」と教えてくれた。
和田さんはこの日の五日前、十八年近く一緒に過ごしたトイプードルをみとったという。半年前にも、もう一匹のトイプードルを十五歳で亡くしており、喪失感は大きい。
いちょう並木の下で元気に遊ぶ愛犬二匹の写真をスマホで見せてくれた。「ここは思い出の場所。月に一、二回は二匹の散歩をして、カフェに行って…。楽しい時間でした」と、青い葉を見つめる。「これから葉が黄色くなり、実ったギンナンが全部落ちてくるのでしょうね」
再開発で、いちょう並木の西側に新球場が隣接することになり、専門家からイチョウの生育阻害を懸念する声がある。帰り際、和田さんは言い残した。「この場所は変わらず残してほしい」
空が少しずつ高くなってきた。並木が色づく秋はすぐそこだ。
文・砂本紅年/写真・内山田正夫