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和船と溶け合う美
秩父鉄道長瀞(ながとろ)駅(埼玉県長瀞町)から、荒川に向かって五分ほど歩く。今月中旬、コナラやクヌギ、イロハモミジなどの葉が鮮やかに色づき、渓谷を飾っていた。この色は清流にも映るので、美しさは倍になる。今年で百周年を迎えた長瀞の代名詞「ライン下り」の和船は、紅葉を引き立たせる名脇役。晩秋に、静と動が溶け合っていた。
長瀞渓谷は大昔、地下二十〜三十キロの高圧でつくられた結晶片岩が隆起、荒川の流れに浸食されて生まれた。薄く重なっている断層は、さながら岩のミルフィーユ。「岩畳」と呼ばれる広大な岩石段丘が、川に沿って六百メートルも続く。一九二四年、国の名勝・天然記念物に指定された。
岩畳の散策は心地いい。対岸には「秩父赤壁」と呼ばれる絶壁や、数本の小さな滝がある。紅葉に包まれていて、日本画のようだ。マガモやキセキレイ、セグロセキレイなどが川面を飛び交っていた。
「月の石もみじ公園」では、真っ赤なイロハモミジが迎えてくれた。恒例のライトアップは二十九日まで。午後五時から九時の間に点灯する。
行く秋の一日を、たっぷり楽しんだ。さすがに、絶景スポットとして人気が高い長瀞だ。
紙面より一部抜粋(2015年11月23日発行 東京新聞)
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