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寒風に吹かれ、コートの襟を立ててイチョウ並木を家路へと向かう。さっきまでいた国立競技場での熱戦を何度も頭のなかで再現しながら。
「あの笛はどうだったのか、とかね。レフェリーは職人で、すべて満足できる試合は少ない。複雑だった」。ラグビーW杯で日本人初の主審を務めた斉藤直樹・神奈川大名誉教授(68)だ。1990年代、毎年12月の第1日曜日に関東大学対抗戦の最後を締めくくる早明戦の笛を吹いた。
大学ラグビーの人気が全盛だった。「タテの明治、ヨコの早稲田」。個性の違う両雄の対決に「歓声が渦を巻くほどすごかった」。90年の勝った方が優勝という試合では、早稲田のフルバック今泉清が独走トライ。終了間際に同点とした。劇的な両校優勝に「いいプレーでいいジャッジができた。数少ない満足のいく場面だった」。
きょう7日、伝統の一戦は改築準備中の国立競技場に替わり秩父宮ラグビー場が舞台だ。聖地を離れたことを寂しがるファンは多いが斉藤さんは言う。「早明戦は華。新しい場所でも盛り上がるはず」。新たな伝説の始まりだ。 (横井武昭)
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