商品概要
澄んだ夜空を、小さな優しい光が埋める。つながるように、目の前の壁画にも星座群がきらめいていた。
東日本大震災で児童ら84人が犠牲になった宮城県石巻市の大川小。震災が起きる9年ほど前、在校生が校庭の隅のコンクリート壁に、東北生まれの宮沢賢治の童話を表現した。欠落した一部は今も、襲った津波の威力を伝える。
震災からの11年で、廃校となった校舎は天井もはがれ落ちた。「廊下の娘のネームプレートもかすれてつらくてね」。5年の次女千聖(ちさと)さん=当時(11)=を失った紫桃(しとう)隆洋さん(57)は漏らす。
壁画も色があせた。ただ、その上に広がる夜空に、紫桃さんは思う。「子どもたちが星になって見守ってくれている。ここは命を考える場所。長く後世に残したい」(横井武昭)
東日本大震災から11年近くがたち、記憶を伝える震災遺構の劣化が進む。児童が描いた校庭の壁画も色あせが目立つ=宮城県石巻市の大川小で(篠原麻希撮影)
紙面より一部抜粋(2022年3月10日発行 東京新聞夕刊)
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