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徳川幕府が成立して間もないころ、江戸の空には天守閣がそびえていた。5層から成り、高さは18階建てのマンションに相当する59メートル。1階の広さは1300平方メートルにも達する。屋根や壁にはふんだんに銅が使われ、頂上部には金シャチも鎮座していた。
威容はけた外れだったが、軍事的な色彩は薄かった。NPO法人「江戸城再建を目指す会」が専門家に依頼して制作した天守閣復元図によると、鉄砲を撃つための壁の小穴「鉄砲狭間(さま)」や、石垣をよじ登る敵に石をぶつける「石落とし」などの攻撃設備がまったく見られない。
太田道灌が初めて城を築いたのは室町時代中期だった。群雄割拠の戦国時代を経て、大名がこぞって幕府に忠誠を誓った江戸初期へ。城郭も大きく変わった。専門家は「戦乱の時代が終わり、平和の象徴として造られたのではないか」と指摘する。
天守閣が明暦の大火で焼失して、約350年がたった。今年6月には、同会が再建への一歩として、天守閣の復元図を公開した。
同会理事の木川靜雄さん(61)は力を込める。「単なる城郭の再建ではなく、日本再生のシンボルとしていきたい」 (中山高志)
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