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空気が澄み切った日には、天守閣展望台から、相模湾のかなたに三浦半島はもとより房総半島も望める。
戦国時代に100年近く続いた小田原北条氏は、その最盛期に関八州を治め、小田原は関東の首府だった。そして城下を周囲約9キロにわたって堀と土塁によって取り囲む独特の「総構え」を築いた。だが天下の堅城も、豊臣秀吉の小田原攻めでは、合戦はほとんど行われずに降伏した。小田原城天守閣学芸員・諏訪間順さん(50)は「秀吉はこの総構えをまねて、京都に残る御土居(おどい)や大阪城の外側などに取り入れた」と話す。
1870(明治3)年に廃城となり、天守閣なども壊された。現在の天守閣は1960(昭和35)年、市制20周年記念事業として市民による瓦一枚運動などで復興された。歴史ブームもあって、昨年は約42万人が入場した。
地元住民には、城内の動物園に親しみが深い。昨年、日本一の長寿だったゾウのウメ子が死に、市民をがっかりさせた。今はニホンザルが残るだけ。一方で国指定史跡として、江戸時代の姿への復元工事が進む。そんなめまぐるしい推移を、本丸にそびえる樹齢400年の「巨松(おおまつ)」が、変わらぬ姿で見つめている。 (長崎磐雄)
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