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小城ながら豊臣秀吉方の攻撃に落城しなかったという史実が、今なお異彩を放つ。
天正18(1590)年、天下統一を目前にした秀吉は、北条方の成田氏がこもるこの城に、石田三成率いる2万の大軍を送った。約28キロの長大な堤を築かせて水攻めを敢行する。だが城は沈まず、堤が切れて攻略は失敗した。沈まなかったのは、城が浮くからだ。そんな風聞から「浮城」の異名まで付いた。
周辺は平らな天然沼地で、水攻めには向かない地形だ。「成田方の兵は2600。普通に攻め込めば簡単に落ちたはず」。それでも戦国の世に終止符を打つ総仕上げを大好きな水攻めで飾りたかったのか。行田市郷土博物館の鈴木紀三雄学芸員(43)は、秀吉の選択に首をひねる。
この史実を基に、作家和田竜さんが2007年に発表した歴史小説「のぼうの城」は40万部を超えるベストセラーとなった。映画化も決まり、来年秋に公開予定だ。観光客は年々増加しており、城を中心としたまちおこしへ機運が盛り上がる。
お城らしい姿は、昭和の終わりに再建された三階櫓(やぐら)と、公園として整備された堀の一部だけだ。それでも、かつての城下町が、再び城のもとでにぎわいを取り戻そうとしている。 (柏崎智子)
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