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♪運動会の旗たてて かける生徒のいさましさ
JR王子駅前に広がる花見の名所・飛鳥山は、明治時代の鉄道唱歌にそう歌われた。
江戸幕府8代将軍の徳川吉宗が桜を植え、庶民の行楽地として親しまれてきた場所を1873(明治6)年、明治政府が日本初の公園の一つに指定した。その後、大正時代にかけ早稲田や慶応、明治などの私学がこぞって運動会の会場にした。
「今みたいに学校にグラウンドがない時代。広い芝に覆われた飛鳥山は、運動会の聖地でした」。北区中央図書館の地域資料専門員、保垣孝幸(ほがきたかゆき)さん(44)が話す。
春と秋の風物詩となった様子は、小説家坪内逍遥や二葉亭四迷の作品にも描かれた。
昭和に入り日本が戦時体制へと突き進むなか、1937(昭和12)年、国民の体力向上を理由に山腹を削って本格的なグラウンドが整備された。戦後しばらくの間は運動会に使われてきたが「土ぼこりが激しい」と住民から声が上がり、65年、東京都から北区へ移管される際に大改修されて姿を消した。
跡地は噴水広場に変わった。平和な時代の広場では、澄んだ秋空の下で走る子どもの声が響いていた。 (奥野斐)
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