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東京駅周辺の大手町、丸の内地区の夜景を上空から眺めると、まるで「光の帽子」だ。バブル崩壊後も東京の夜は輝きを増し、成長している。湾岸部には高層マンション、ターミナル周辺は再開発によるオフィスビルが競うように背を伸ばす。高度経済成長のシンボルだった東京タワーも、ちりばめられた光の宝石の一つにしかすぎない。
1990年代初頭に「東京夜景」を出版して以来、夜景評論家として活動する丸々もとおさん(48)は、「バブル崩壊後、癒やしや、安心感を与えてくれる夜景の価値に、幅広い世代が気付いた。夜景は、恋人たちだけのものではなくなった。個性的なライトアップのビルも増えてきた」と、この20年の変化を振り返る。確かに、窓からの夜景をPRするマンション広告や雑誌の夜景特集が目につくようになった。
一昨年の東日本大震災は、都会からネオンの輝きを奪った。暗くなった首都で、繁栄の裏にある犠牲を、だれもが考えた。無駄に消費される光はもはや支持されないだろう。一方で、イルミネーションのイベントは増えていると丸々さんは言う。「震災で、人々は明かりの本質に向き合った。光は希望でもある。ともしびが消えた人の心に、元気をくれるんです」 (井上幸一)
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