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記者でもあった俳人の正岡子規が1899(明治32)年、新聞「日本」に発表した「四百年後の東京」という作品がある。はるか未来の都市イメージのなかで、東京湾はこんなふうに描かれた。
「必要物は悉(ことごと)くこれを商ふ船舶ありて(中略)海上に充満せり」。酒を売る船、裁縫業を営む船、内科医を乗せた船など、あらゆる商売を行う船が行き交う。さながら「海上の市街」。便利さは陸地を上回ると予言した。
「四百年後の東京」が書かれてから100年余りがたった。臨海部は埋め立てが進み、5700ヘクタールを超える新たな「陸地」が生まれた。そこに姿を見せたのは、若者であふれるショッピングモールにイベント施設、林立する超高層マンション…。子規の壮大な空想を超えた祝祭空間は、首都の新たな顔になった。
2020年に開かれる東京五輪・パラリンピックでは、臨海部に21の競技会場が集中する。そのうち9会場は新設だ。選手村のできる晴海地区に住んで10年というタクシー運転手の平下洋二さん(53)は言う。「ここは東京で最も潜在力が高い場所。どんな発展を遂げるか楽しみ」
祭典が来る。「7年後の東京」へ臨海部は急ぎ足に、その姿を変えていく。 (永山陽平)
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