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東京都庁の取材は足を使う。比喩ではない。知事が率いる行政組織の入る本庁舎と、それを監視する議会の入る棟が離れて立つ。二つの建物を1日に何度も往復するのは、なかなかしんどい。
設計した丹下健三氏は、ここに重要な意味を込めた。一定の距離を置く二つの権力機関のまん中を都民に開かれた「広場」とした。広場の外周に沿い弧を描く回廊で足を棒にするたびに心する。都政の主人公は都民でなければならない、と。
都知事選の前日の土曜日から降った大雪は広場を覆い尽くした。冷え冷えとした日曜日、残雪が各地で投票所への足を阻み、有権者の棄権は過半数に上った。新知事は投票に行けなかった人たちの声にも耳を傾けなければならない。庁舎にこもることなく雪の解けた広場へと降りて。
もう一つの広場、新宿中央公園の向かいには昔ながらの住宅街が広がる。カフェ店主の品川尚之さん(62)は「五輪を機に東京の街を変える」と意気込む知事に注文した。「開発ばかりでなく下町情緒を大切にしてほしい。庶民のことを知るためこの街を一度訪れてほしい」 (松村裕子)
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