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幕末の伊豆韮山代官江川英龍(ひでたつ)はマルチな才人だった。日本全国にパンを広めた「パン祖」であり、絵筆も執り、兵法に秀でていた。
開国を迫るペリーの黒船が来航すると、東京湾防衛の要として砲台を据える台場を建設するよう、幕府から命じられる。英龍は、現在の東品川から豊洲にかけて12基を並べる計画を立てた。
最初の台場が着工されてから140年後の1993年、英龍のデザインした防衛ラインをなぞるようにレインボーブリッジが開通した。夜には444個の照明で輝く橋は、国内外からやってくる船に、旅の始まりと終わりを告げる首都の海上門でもある。伊豆大島からジェット船で竹芝埠頭(ふとう)に戻ってきた林弘美さん(31)=荒川区=は話した。「橋をくぐるたび『おかえり』と祝福されたような気分になる」
いま、2基の台場が国の史跡として残る。軍事施設として造られた小さな島は生い茂る緑に包まれ、祈りの場にも似た神秘的な姿を見せている。そのすぐ真上で「虹の架け橋」が、きょうも多くの人々の夢を運んでいる。 (永山陽平)
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