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高度経済成長期、江東区の埋め立て地に集中するごみは地域の人たちを悩ませた。焼却されず直接トラックで持ち込まれる生ごみの汚汁、ハエの大量発生…。
食肉店を営んでいた数藤(すどう)武司さん(81)は振り返る。「まな板が真っ黒になった。ぬぐうと50〜60匹もハエがいた」。焼却工場の分散整備で「自区内処理」を求めた美濃部亮吉都知事は「ごみ戦争」と形容した。
当時の最終処分場が「新夢の島」と呼ばれた15号埋め立て地。焼却工場の整備が進まない杉並区から来たごみ運搬車は江東区民が体を張って追い返した。現実となったごみ戦争。大きな穴に捨てたいものを次々放り込んで喜んでいたら、天から小石が降ってくるという星新一さんの短編「おーい でてこーい」を想起させる警句に思える。
15号地は覆土され若洲海浜公園となった。東京五輪のセーリング会場の予定地にも選ばれた。ゴルフ場やキャンプ場のある美しい緑地は過去の記憶までも覆ってしまったかのようだが、巨額な施設整備費が再びの「小石」となる恐れがあり五輪計画は見直しが議論されている。 (荘加卓嗣)
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