商品概要
「屋敷地」「耕地」「平地林」が短冊をつなげたように整然と並ぶ。都心からさほど離れていない住宅地に、300年以上前の江戸時代に開墾されたままの姿が残ることに奇跡を感じる。
埼玉県所沢市、三芳(みよし)町などに広がる「三富(さんとめ)新田」では、農業者たちが落ち葉から堆肥を作る循環型の江戸農法を引き継いでいる。
川越藩主の柳沢吉保が1694年、農家1軒当たり幅70メートル、長さ680メートルほどに区画して切り開いた計画農村と循環農法はいま、21世紀の環境モデルとして注目されるようになり、三芳町は、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」に三富新田を申請した。20日に国内審査の結論が出る予定だ。
「上空から眺めると価値が一目で分かる」と東京農業大名誉教授の進士五十八(しんじいそや)さんは話す。農業遺産というと、田舎の田園風景をイメージするが、高速道路インターが近く工場や倉庫、資材置き場なども点在するこの場所に、そんな純粋な美しさはない。むしろ開発の波を乗り越えた首都圏の風景にこそ輝く価値が見える。 (鈴木賀津彦)
注意事項