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9月の全米オープンテニスシングルスで日本人初の決勝進出を果たした錦織圭選手の活躍は、ある歴史を思い起こさせた。1932(昭和7)年から2年連続、ウィンブルドン大会シングルスで4強入りした佐藤次郎ら名選手の数々の伝説。戦前の日本はテニス強豪国の一つに数えられた。
名門の「田園テニス倶楽部」が誕生したのは、そんな時代だ。野球場跡地にクレー(土)コートを整備し34年にオープン。隣地には多目的スタジアムの「田園コロシアム」が建てられた。国際大会の会場ともなり、田園調布の「テニスの聖地」のイメージが定着していく。
田園テニス倶楽部で今も働く斎藤茂さん(73)は半世紀前、国別対抗戦「デビスカップ」のコート整備を初めて任されたときのことを覚えている。「大勢の人がいて緊張しました。白線を引くとき足ががくがくして…」。プロレスやコンサート会場にも使われ「田コロ」の愛称がついたスタジアムは89年に閉鎖、マンションとなった。その住民らが憩う近くの「田コロ児童公園」の名前が記憶を未来へと伝えている。 (小田克也)
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