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毎月五日に市が開かれていたことから名付けられた「五日市」(あきる野市)。その歴史は戦国時代の1574年にまでさかのぼる。今は衰退したが、かつて檜原(ひのはら)街道沿いは、多摩地域の森林の恵みを生かした木炭や木材の取引でにぎわった。
古くから栄えた街は江戸時代以降、多くの人たちを引きつけ、さらなる発展につながった。「幕末から明治の初めにかけて、商売での成功を求め、立川や八王子から移り住んできたんです」。地元の五日市郷土館で、30年にわたって地域の歴史を調べている清水菊子さん(75)は言う。
商人たちは取引のため東京や横浜に足を運び、富だけでなく最新の情報も持ち帰った。「進取の精神」がはぐくまれ、やがて明治期に民間で起草された「五日市憲法草案」として開花する。
街道沿いには、五日市憲法を起草した千葉卓三郎が校長を務めた「勧能学校」の跡地もあり、先人の息遣いは今も感じられる。一方で、昨年は街道沿いにイタリアンレストランやパン店がオープンし、地元住民でにぎわう。新しいものを受け入れる風土は変わらないようだ。 (布施谷航)
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