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黄金色 鳥影に秋思
群馬県館林市と邑楽(おうら)町にまたがる多々良沼で二日夕、黄金色に染まる水辺を飛ぶハマシギの群れ。突然、約二十羽が整然と編隊を組んで飛び回った。時々、一斉に反転する姿は壮観だ。光で透き通った翼の半分が鮮やか。渡来したヒドリガモなどが一休み中の水面に、鳥影が動いた。まるで日本画のような一瞬の光景に魅了された。
ハマシギは旅鳥または冬鳥として干潟や水田、湖沼などに渡来するシギ科。全長は二一センチで翼を広げると約三七センチに。北極圏で繁殖し、東アジアなどで越冬する。長い旅の途中に、日本の湿地に立ち寄りエネルギーを補給して、体力を回復させる。冬鳥で日本に残る個体も多い。秋と冬の到来を感じさせる鳥だ。
多々良沼は面積約八十ヘクタールで周囲約五・七キロ。ヘラブナなどの釣り場で知られる。有名な探鳥ポイントは同沼の西側中央にある浮島弁財天付近。沼の中に半島のように突き出した場所で、周囲には野鳥が数多く観察できる。夕方、日が沈む南西方向にレンズを向けたのが、この一枚だ。
今回は二日間滞在し、多くの野鳥のドラマに出合った。十数羽で飛行するカンムリカイツブリや魚を捕るミサゴ、渡り途中のツルシギとアオアシシギ、木の実を食べるメジロ、オオタカに驚いて飛び立つカモの群れ、今季初めてのオオハクチョウの群れ六羽などが印象に残った。詳細は今月の「探鳥」に掲載したい。
私の写真のライフワークは渡良瀬川流域の人間と自然の営みである。撮影取材の途中、この沼に立ち寄り疲れた体と心を癒やすことが多い。今思うとまるでハマシギの心境だったのかもしれない。野鳥に励まされながらのカメラマン人生である。 (堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年11月7日発行 東京新聞)
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