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天と地と…雲海泳ぐ榛名山
群馬県中之条町の渋峠(しぶとうげ)で9月下旬、素晴らしい朝焼けと雲海に出会った。日の出約45分前、東の空の地平線は黄と朱色に色づき始めた。雲海の下は、闇の中に草津温泉の街灯りが広がる。奥には雲海から頭を出した榛名山の山並みが墨絵のように連なった。気温は6度。カメラをさわる指先が寒い。秋の夜明けの神々しい光景に魅了された。
渋峠は群馬県中之条町と長野県山ノ内町の県境にある峠。標高は2172メートルで日本の国道の最高地点にある。国道292号線が通り、志賀高原と草津温泉を結ぶ日本有数の山岳道路だ。県境から500メートルほど群馬県側に最高地点の石碑が立ち、10台ほどの駐車スペースがある。
最高地点からの展望は素晴らしい。眼下にはラムサール条約登録湿地の芳ケ平湿地群の池塘(ちとう)や木道が広がる。まるで絵画のような光景に、ホッコリ。近くで噴煙を吐く草津白根山が異彩を放つ。その奥には浅間山と頭を出した秀麗な富士山が見られた。紅葉はまだ色づきはじめだった。地元の写真愛好家によると、例年10月上旬から中旬が見ごろという。
夜は雲一つない満天の星が広がった。東の空にオリオン座が鎮座。真上には天の川の星の帯が広がる。20秒間露光して星を写すと、その数に圧倒された。夜明け前、三日月を左右逆にしたような有明の月が東から昇ってきた。星や月の撮影に至福のひとときを感じた。今回は星景写真も良かったが、夜明けの空の色と人工的な街の灯りとの競演に心打たれた。(堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年10月10日発行 東京中日スポーツ)
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