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富士ともす人の光
山梨県山中湖村の山中湖パノラマ台で四日、夏の夜明けを彩る富士山を撮影した。日の出まで、あと一時間。山頂付近はほんのりと赤みを帯び始め、登山者のライトが光の線を描き出す。斜面に山小屋の灯り(あか)が瞬き、山麓の街灯りが霧に色を与える。「ゴロスケ ホッホー」とフクロウの声が響き渡った。眼下の山中湖はまだ深い闇の中だが、天空の天の川は白み始めていた。夜明けの神々しい光景に至福の時間を感じた。
山中湖パノラマ台は富士山と山中湖を見渡すビュースポットとして知られる展望台だ。標高は一〇九〇メートル。山中湖から三国峠に至る県道の途中にあり、天気が良いと、南アルプスまで見渡せる。天体観測スポットとしても有名で、前夜に数組の家族連れが天体望遠鏡を囲み星空を楽しんでいた。三日月も美しかった。
夏の夜の富士山は登山者のライトの光跡がフォトジェニックだ。山頂で御来光を拝むために、夜に登山する。山中湖パノラマ台からは四つある登山道のうち、三つが見られる。写真右側は吉田、中央は須走(すばしり)、左端は御殿場の各ルート。八合目で合流する吉田と須走ルートは、光跡が「人」の字のように見えるため、「人文字」と呼ばれている。週末は約六千人前後が登るという。
一夜明けて、山中湖は雲海が一面に広がり絶景に。お山は朝の光を浴びて少し赤富士になってくれた。未明から明け方、朝の夏富士が見せたドラマに心から魅了された。 (堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年8月7日発行 東京新聞)
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