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煙突に日は落ちて、ゲロゲロゲロッ
瀬戸内海の海岸に広がる太陽石油四国事業所(愛媛県今治市菊間町)を6月下旬に訪れた。今、工場夜景の魅力で人気を集めるスポットだ。工場周辺の水田に水が張られ、水鏡になるのは一年で、田植えの時期だけ。この日は約60人の写真愛好家が集い、人出の多さに驚いた。日没後、鮮やかな夕焼け空に、製油所のプラントの複雑な配管が異彩を放った。瀬戸内で見る「工場萌え」の光景に魅了された。水田地帯の農道を通る車の赤い光跡も印象的だった。
太陽石油四国事業所は四国唯一の石油製品の精製工場だ。操業開始は1938(昭和13)年。精製能力は一日13万8000バーレルという。太陽石油は愛媛県を地盤に、主に西日本の近畿と四国で営業を展開する。ガソリンスタンドのブランド名はSOLATO(ソラト)。県内の工場夜景スポットでは四国中央市の製紙工場群とともに人気がある。
今、非日常に魅了される工場萌えに共感を抱く人たちは多い。2011(平成23)年2月、工場夜景を観光資源とする川崎市、室蘭市(北海道)、四日市市(三重県)、北九州市の4市が「第1回全国工場夜景サミット」を開催した。その後、反響を呼んで7市が加入して11市に。次回サミットは第10回を迎える。
今回の工場夜景と水田のコラボレーションは珍しい光景だった。夕日が煙突の間に沈むと同時に「ゲロゲロゲロ」とカエルの大合唱が始まった。暗闇が広がると、益々SF映画のような幻想的な雰囲気に包まれた。自然に満ちた瀬戸内の工場萌えに心癒やされた。(堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年7月11日発行 東京中日スポーツ)
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