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干潟渡る 謎の電柱
道路が水没したのではない。千葉県木更津市の江川海岸で一日夜明け前、海の上に立ち並ぶ不思議な電柱を撮影した。対岸に広がる日本製鉄君津製鉄所の工場の明かりが満潮の海面に反射して、まるで光の柱のような色鮮やかな列をつくった。海上電柱と共演する幻想的な光景に魅了されていると、上空を羽田空港に着陸する飛行機が通過した。
江川海岸は東京湾に残された最大の干潟、盤洲(ばんず)干潟にある。昔からノリ養殖やアサリ漁が盛んで、春から夏は潮干狩り場として有名だ。かつて電柱はアサリ密漁の監視小屋に送電するために造られた。約一キロ先に小屋があり、双眼鏡で観察すると四十五本を数えた。平成の半ばに役割を終え、今は通電していない。
この海岸は約四年前、「日本のウユニ塩湖」として話題になった。干潮の水鏡に天空を映す光景が、ボリビアにある有名な絶景スポットに似ていると。同時に、アニメ映画「千と千尋の神隠し」に登場する、海を走る海原電鉄の列車シーンをほうふつさせたという。今もなお大人気で大勢の人が訪れる。 (堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年4月9日発行 東京新聞)
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