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千年の御神木 春光に微笑む
樹齢1000年を超えるクスノキの巨樹として知られる加茂の大クス(徳島県東みよし町)を18日に訪ねた。宅地と農地に囲まれた広場に一本の巨木が、天に向かって大きな枝を広げていた。樹形が実に美しい。日が昇り、朝の光が幹や葉を照らし出すと、益々神々しい光景になった。その時、木の下にある祠で参拝客の女性が手を合わせた。ご神木に向かって祈る姿に心から魅了された。加茂の大クスは高さ26メートル、幹回り16・7メートル、枝張り東西52メートル、南北42メートルにもなる。枝が均等に広がって伸びる姿は、まるで森のような光景だ。1956(昭和31)年に国の特別天然記念物に指定。クスノキの同記念物は全国に3カ所だけで、他は立花山クスノキ原始林(福岡県)と蒲生のクス(鹿児島県)。この巨樹は長編アニメーション映画「となりのトトロ」で、トトロが棲む巨大なクスノキを彷彿させた。わくわくしながら撮影し、根元と祠をよく見るとキツネと白蛇がまつられていた。おもわずホッコリ。ベンチに横になり数時間、森林浴を兼ねて木陰でひと休みした。木から発散されるフィトンチッドと呼ばれる抗菌作用を持つ揮発成分が体に良いという。今回は少し効果があったようで、心が癒やされ、久しぶりにリラックスできた。ボーとした時間は健康に大切なのだ。歳時記の夏の季語に樟落葉(くすおちば)がある。クスの若葉が出て、古い葉が落ちることをいう。5月の新緑のころだが、大クスの葉は黄緑の華やいだ色になり、とても印象的という。再び訪れてみたい。 (堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年2月28日発行 東京中日スポーツ)
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