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猛暑の空に秋の色
避暑を兼ね、山梨県笛吹(ふえふき)市芦川町の新道(しんどう)峠に七月下旬、訪れた。標高約一、五八〇メートル。吹く風は心地よく、早くも秋の気配を感じさせる筋状の雲も現れた。待つこと約一時間、淡い紫と桃色を帯びた鮮やかな夕焼けが広がった。眼下に河口湖と街並みが美しい。裾野を広げる秀麗な富士山との壮観な光景に魅了された。新道峠は富士山のビュースポットで知られる。近年は「インスタ映え」すると、若い人に人気の撮影地だ。峠から約十分登った第一展望台(標高約一、六二〇メートル)にはライブカメラが設置され、スマートフォンで富士山の「今」を確認できる。市観光商工課は「世界に向かってこの光景を発信したい。二〇二〇年までにさらに整備を目指す」と話す。この日は熱帯夜が予想され、涼しい峠の一角で夜を過ごすことにした。運が良ければ、富士の山小屋と登山者の灯(あか)り、天の川の撮影も可能だ。気温は一八度。残念ながら悪天候で何度も霧が発生した。もう少し低ければ見事な雲海だろう。幸いにも未明に霧は晴れ、南東の空にひときわ赤く輝く火星が見られた。十五年ぶりの大接近という。神秘的な火星の姿に感動した。九月上旬まで明るく輝いて観察しやすい。峠は、初夏と晩秋に大勢の撮影者が集う。河口湖上空に雲海が発生しやすいからだ。街灯りが雲海に反射して七色になり、幻想的な世界を描いてくれる。富士山が冠雪した十一月に再び訪れたい。
紙面より一部抜粋(2018年8月7日発行 東京新聞)
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