商品概要
100万年の向こうに日常がある。
徳島県阿波市にある国の天然記念物・阿波の土柱を2日、訪れた。山の斜面に、長年の風雨で浸食されてできた多数の土の柱が異彩を放つ。大自然が造り出した芸術だ。頂上の展望台から、徳島平野の東側が一望される。吉野川の流れも。約100万年前の地層にできた不思議な地形と現在の街並みが描く大パノラマに圧倒された。日没にライトアップ(22時まで)され、さらに感動が深まった。阿波の土柱は、アメリカのロッキー山脈、イタリアのチロル地方の土柱と並んで「世界三大奇勝」に称される、と案内板にあった。南北約90メートル、東西約50メートルの砂礫層に、10メートルほどの土の柱が連立する光景は世界的にも珍しい。1934(昭和9)年に国の天然記念物に指定された。この貴重な自然遺産を巡るコースは駐車場から約5分で、下から眺める展望台へ。立派な休憩所が整備されていた。さらに急坂を約10分登ると土柱の頂上に着く。見下ろす場所に一切の柵もなく、スリル満点だ。徳島平野を臨む展望台へは、来た道を戻り反対側の山に約20分ほど登る。残念ながら展望台からは夏木が茂って土柱が半分隠されていた。そのため、少し下った登山道の途中で撮影した。 徳島平野は四国八十八ケ所霊場の始まりの場所だ。1番札所は鳴門市の霊山寺(りょうぜんじ)。7番の十楽寺(じゅうらくじ)から土柱のある阿波市に。10番の切幡寺(きりはたじ)までは、さらに吉野川沿いの平野の北側を西に進む。1番から10番へは約31キロ。11番の藤井寺へは土柱の9キロ手前で南下して吉野川を渡る。夕暮れの平野を一望しながら、いつの日か、歩き遍路で再び訪れたいと思った。
紙面より一部抜粋(2018年7月26日発行 東京中日スポーツ)
注意事項