商品概要
大友皇子偲ぶ十六夜桜の水鏡
千葉県市原市の小湊鉄道飯給(いたぶ)駅付近で今月1日、田んぼの水鏡に映る列車と桜(ソメイヨシノ)を撮影した。闇をほのぼのと照らす十六夜(いざよい)とライトアップされた桜の共演が幻想的だ。里山に警笛を鳴らして列車が出発した時、水面の影は一段と鮮明に。駅ホームは列車に隠れたが、郷愁を感じるのどかな光景に心から魅了された。小湊鉄道は五井駅から上総(かずさ)中野駅まで39・1キロを結ぶ非電化の私鉄ローカル線。飯給駅は1926(大正15)年9月に開業し今年で92年を迎える。この2本の桜は半世紀前に昔の駅長さんらが植えたという。今、桜は多くの鉄道ファンや観光客を集めるようになった。駅は56年から無人駅に。そばには市原市が、約200平方メートルの敷地にぽつんと立つアート作品のトイレを設置した。女性専用で定員一人。無料だ。飯給は全国有数の難読駅名の一つ。その名は壬申(じんしん)の乱(672年)で敗れて、逃げてきた大友皇子らに村人がご飯を差し上げたという伝説に由来するという。インスタ映えと鉄道写真が融合して有名になった飯給駅。この1枚を撮る時、田んぼの周りに約50台を超えるカメラの放列があった。列車が通り過ぎると、皆さん満足そうな笑みを浮かべていた。小湊鉄道によると、水が張られた田とライトアップは10年ほど前からと言う。今年は桜の満開が例年より約1週間早かった。今、さわやかな新緑の季節を迎えている。首都圏では珍しい気動車や里山トロッコ列車に乗って、再び飯給駅を訪れてみたい。
紙面より一部抜粋(2018年4月26日発行 東京中日スポーツ)
注意事項