商品概要
芽吹く森 味わい憩う
さいたま市桜区の秋ケ瀬公園内のピクニックの森で三月三十日朝、芽吹きとともに花をつけ始めたエノキの枝で実を食べるコイカル。黒い頭と黄色いくちばしが印象的だ。好物の実を探して枝を歩き、美しい「花園」でひと休み。豊かな春の自然の営みにとても感動した。雄二羽と雌一羽の合計三羽が見られた。コイカルは旅鳥または冬鳥として渡来するアトリ科。全長は一九センチ。見る機会は少ない鳥だ。イカルに似ているが、関東では百羽以上のイカルの群れに一羽いる程度。今回、三羽だけの群れは珍しい。同公園には二月下旬から滞在。四月に入り、コイカルは同じ公園内の子供の森に移動した。八日、エノキで新芽と若葉を食べる三羽に九日ぶりに対面。「ヒーコーキ」とイカルに似た美しい声でさえずっていた。すぐに三十人ほどの野鳥愛好家が集まり、皆さん喜んでいた。同公園の森には四月中旬から大型連休まで、渡り途中の夏鳥が立ち寄る。オオルリやキビタキ、サンコウチョウ、センダイムシクイなど人気の鳥だ。繁殖地の北の山に向かう途中、この森でひと休みして体力を回復させる。滞在は一日から数日以内だが、身近な都市公園で見られるのはうれしい。広さ約百ヘクタールの同公園は、荒川左岸の河川敷に一九七一年に開設された。南北三キロ、東西一・五キロほど。若葉と新緑が美しい季節を迎えている。二つの森を探鳥すると、森林浴で心癒やされる。観察者が多いので、誰かが見つけてくれるのもうれしい。今年も巣箱からフクロウのヒナが顔を出すだろうか。コイカルはまだいるだろうか。わくわくしながら春の森を歩く。
紙面より一部抜粋(2018年4月12日発行 東京新聞)
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