商品概要
雪山の風紋たくましく光る
氷点下12度。いてつく美幌峠(北海道美幌町)を12月中旬、訪れた。夜明け前、霧が消えて阿寒摩周国立公園の大パノラマが広がった。眼下には世界第2位の透明度の火山湖である屈斜路湖の上に大雲海。知床の山々も鮮やかだ。厚い雲の間から日が昇ると、朱色の光線が雪の風紋を浮かび上がらせる。神秘的な一瞬。かじかんだ指でゆっくりシャッターを押した。「来て良かった!」と心から感じた。美幌峠は美幌町と弟子屈町の境にある国道243号線の峠である。標高は525メートル。屈斜路湖の外輪山の西縁に位置する。観光名所の道の駅「ぐるっとパノラマ美幌峠」があり、近くには展望台がある。下の展望台へは徒歩3分、上へは5分ほどで行ける。360度の眺望は実に雄大で素晴らしい。下の展望台付近に、歌手・美空ひばりの「美幌峠」の歌碑(作詞 志賀貢、作曲 岡千秋)が建っている。雪に覆われた厳寒の中で、「ああ さいはての 美幌峠に 霧が降る」の歌詞を見ると、さらに峠への感動が増した。歌と絶景が競演しているのがうれしかった。前夜は屈斜路湖そばの川湯温泉に泊まった。100%源泉かけ流しで、硫黄の匂いに包まれたいい温泉だ。雪の露天風呂は最高に気分が良かった。日の出2時間前に宿を出た時の気温は氷点下17度。霧氷が素晴らしい。峠までは車で約30分。到着すると、気温が数度上がったのに驚いた。川湯温泉は外輪山の盆地にあり、放射冷却が強くて冷え込んだのだろう。 昼間は青空が広がった。峠を下り、屈斜路湖で越冬するオオハクチョウ数十羽を撮影した。びょうぶのように広がる美幌峠の雪山を背景に、優雅に泳ぐ白鳥も絶景だ。冬の雲海の上と下の世界に感動した一日だった。
紙面より一部抜粋(2018年1月30日発行 東京新聞)
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