商品概要
厳寒の中 華麗な求愛
茨城県坂東市の菅生(すがお)沼(上沼)に一月二十八日早朝、越冬するコハクチョウを訪ねた。厳しい寒波の影響で、沼は全面結氷していた。気温は氷点下四度。いてつく氷上で「コォーコォーコォー」と鳴き交わしながら、翼を広げて羽ばたく求愛ダンスを見せてくれた。まるでフィギュアスケートのアイスダンスのように華麗だ。厳寒の中、心癒やす光景に魅了された。全面結氷した朝の沼にはコハクチョウが次々と飛来した。その数約二百羽。一羽の体重は六〜八キロになる。全羽が乗っても壊れない分厚い氷に驚いた。二十二日の雪が周辺にも残り、冷え込んだのだろう。コハクチョウはシベリアの北極圏で繁殖し、冬に日本に渡来。都心に近い白鳥飛来地「本埜(もとの)の白鳥の郷」(千葉県印西市)では約千羽が、菅生沼では約二百七十羽がそれぞれ越冬中だ。幼鳥を含む家族群で行動し、つがい関係は一生続くとされる。一九八九年から白鳥の世話をする菅生沼白鳥愛好会の佐藤富雄さん(82)は「今年は幼鳥の数が少ない」と心配する。繁殖地の環境が悪かったのだろうか。「例年よりハクチョウもカモも少ない」と話す。午後二時ごろになると、白鳥を撮る写真愛好家が集まってくる。ねぐらになる菅生沼の南端(下沼)へ飛び立つ群れを撮影するためだ。色づいた夕暮れの空を飛ぶ光景が人気を集める。二十六日夕、西の空に彩雲が現れ、その中を飛ぶ光景が印象的だった。残念ながら写真は彩雲と鳥とのバランスが悪かった。北帰行まであと一カ月ほど。白鳥が演じる自然のドラマをもう少し楽しみたい。
紙面より一部抜粋(2018年2月1日発行 東京新聞)
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