商品概要
逆さ富士おぼろに金屏風
埼玉県所沢市の狭山湖を12月下旬、訪れた。夕映えの空に浮かぶ富士山と色を染める湖面に魅了された。日没後、空は赤から朱、黄色と色を刻々と変化させていく。30数分後、最も鮮やかに。西の空には三日月も現れた。冬の空の薄明の色は実に素晴らしい。まさに、至福の時だった。狭山湖から富士山までの距離は約80キロ。秩父と丹沢山地の間が低くなり、奥多摩の山々越しに、美しい稜線の富士山が見ることができた。静かな湖面には、逆さ富士がほんのり映る。その奥には、冬鳥のカンムリカイツブリとカモ類の大きな群れが帯のように浮かんでいた。観察地の南北に走るえん堤の長さは約500メートル。一番北側にある東屋前の展望デッキ周辺は、富士山が見られる日に写真愛好家が集う。2日連続で通ったが、ともに10数人がカメラを構えていた。道行く人も足を止めて、美しい景観を楽しむ。富士山の反対側には東京スカイツリーがくっきり望めた。狭山湖は、狭山丘陵の深い谷に1934(昭和9年)、東京都民の水がめとして完成した。多摩川に設置された取水堰からの導水が主な水源。ためられた水は浄水場へ送られ、飲み水として利用される。正式名称は山口貯水池。狭山湖は通称名だ。南側には同様に、通称「多摩湖」と呼ばれる村山貯水池がある。湖と富士山の有名な景観は富士五湖(山梨県)や田貫湖(静岡県)、芦ノ湖(神奈川県)などが知られるが、富士山周辺以外では、狭山湖が有数の撮影地だろう。夕方も良いが、夜明けから日の出のころも人気がある。次回は湖面に映る雪の朝富士を撮影してみたい。
紙面より一部抜粋(2017年12月28日発行 東京中日スポーツ)
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