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氷点下11度、タンチョウ優雅に
日本最大の湿地が広がる釧路湿原に生息するタンチョウを求めて12月中旬、北海道鶴居村を訪れた。夜明けすぎ、ねぐらの雪裡(せつり)川から群れが次々に飛び立った。その数は約300羽。距離は観察場所の音羽橋(おとわばし)から数百メートル先だ。「コォーコォー」。鳴く声が厳寒の大地に広がる。気温は氷点下11度。冬の川を優雅に舞うタンチョウに魅了された。タンチョウは日本最大の鳥で全長は140センチほど。北海道東部とロシア・アムール川中流域、中国東北部などが生息地だ。漢字では「丹頂」と書く。その名は頭が赤いことに由来する。日本産7種のツルの中で唯一、名前にツルと付かない。「タンチョウヅル」とは言わないのだ。かつて北海道では普通に生息していた。明治時代の乱獲で一時は絶滅したと思われていたが、1924(大正13)年、鶴居村で10数羽の生存が確認された。戦後、冬の餌不足から絶滅の危機を救うために各所でタンチョウへの人工給餌が始まり、生息数も回復。現在は北海道に約1800羽いるという。その一人、酪農家の伊藤良孝さん(1919〜2000年)の給餌場は現在、公益財団法人・日本野鳥の会が鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリとして運営している。入場無料。冬は毎朝9時ごろ給餌が行われ、300羽前後のタンチョウが集う。ねぐらに戻る夕方まで滞在。雪原を優雅に舞う光景を身近に観察できるため、観光客も多い。寒さが一番厳しい1月から2月、ねぐらの雪裡川に気荒らしが立ち、両岸の木々が霧氷で白くなる確率が高くなるという。また絶景を求めて訪れたい。
紙面より一部抜粋(2017年12月22日発行 東京新聞)
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