商品概要
赤い実の「お立ち台」
清瀬市中里の金山調節池で十月下旬、美しい果実がたわわに実ったピラカンサから飛び立つカワセミ。朝の光を浴びて色鮮やかだ。「チー」と鳴いて水面を飛んだ。この枝は通称「お立ち台」と呼ばれ、カワセミが池の小魚に向かって飛び込むポイントだ。この日は日の出から午前十時までに三回止まり、二回飛び込んだ。ピラカンサは隔年でよく実る。昨年は実も少なくくすんでいたが、今年の赤は素晴らしい。秋の絶景を求めて連日、多くの野鳥愛好家が撮影に訪れる。その一人、肥沼(こいぬま)智さん(58)は十数年前、カワセミを撮るために近くに越してきた。仕事前に毎朝訪れる。「今は三年目の雌と若鳥二羽が飛来する。五月には白い花が咲いて美しい」。ブログ「かんばんやの四季彩翡翠(かわせみ)」に載せる作品はどれも素晴らしい。仲間たちとピラカンサの剪定(せんてい)や周囲の清掃もして、豊かな環境を守っている。赤い実は十二月に入ると、なくなってしまう。ツグミやアカハラ、オナガ、ヒヨドリ、メジロなどが飛来し、熟しておいしくなった実を食べ尽くす。冬の森のレストランのようだ。池の北側は埼玉県。農地が広がる。都県境の無人野菜直売所には、サトイモやハクサイなど新鮮な野菜が一袋百円で並ぶ。東京側の遊歩道を歩く人たちが埼玉側に手を伸ばして野菜を取っていく。農家の人によると、代金は七割は置いてあるそうだ。探鳥の小さな旅に出ると、人々の営みにも触れられて楽しい。
紙面より一部抜粋(2017年11月9日発行 東京新聞)
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