商品概要
宇和の海 団畑濡れて 雲の帯
四国の西南に位置する愛媛県宇和島市の遊子水荷浦(ゆすみずがうら)の段畑(だんばた)。秋色が深まった20日朝、訪れた。30度を越える急傾斜地に、石垣造りの段々畑が連なる。地元では段々畑のことを段畑と呼ぶ。頂まで徒歩10数分。段畑の造形美と静かな海のコントラストに魅了された。対岸の山の霧雲にできた雲の帯。そして、養殖いかだが浮かぶ海を行く漁船もいい脇役になった。
段畑は2007(平成19)年7月、国内で3例目の国の重要文化的景観に選定された。広さは約8・3ヘクタール。近世から営まれ続けた半農半漁の暮らしを伝える独特の文化的景観と高く評価され、貴重な日本の文化財として認められた。第1号は2006年1月の「近江八幡の水郷」(滋賀県近江八幡市)で、58件が選定されている。
現在はNPO法人「段畑を守ろう会」が行政と連携し、オーナー制度などで管理運営する。畑で栽培されているのはジャガイモ。訪れた日は、耕した畑に、もみ殻がまかれていた。例年11月に種イモを植え付け、来年4月に収穫する。石垣による温熱効果で良く育ち「とてもホクホクしておいしい」という。地元の住民は約140人だが、来訪者は年間約2万人を越える。
沖の宇和島湾では養殖いかだでタイやハマチなどを生産する。いかだの幾何学模様が美しい。マダイの出荷量は愛媛県が日本一を誇る。山と海の自然と人間の営みに魅了された。ジャガイモの葉が茂る早春に、もう一度訪れたい。
紙面より一部抜粋(2017年10月26日発行 東京中日スポーツ)
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