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湿原のキジ、極彩色の決闘
秋の野に、赤い顔と緑の胸、褐色の翼が跳ねた。栃木県栃木市の渡良瀬遊水地で9月下旬、激しい縄張り争いをするキジの雄たち。長いにらみあいの末、跳び上がって脚の蹴爪(けずめ)で激しく蹴りあう。何度も繰り返し、戦いは数十分も続いた。色鮮やかなキジが何度も宙に舞う光景が印象的だった。キジは留鳥として草原や農耕地、林などに生息する日本の国鳥だ。全長は雄81センチ、雌58センチ。春から夏の繁殖期には縄張りをつくって子育てをする。その面積は直径約400メートルになるという。秋になっても縄張りを争う2羽は珍しい光景だった。この日は珍しい白いキジを撮影するのが目的だった。地元の鳥仲間の小倉明さんが8月中旬に発見。キジは雌で、4羽のひなを連れていた。地元紙の下野新聞に小倉さんの写真が掲載されると話題を呼び、多くの野鳥ファンが集った。遺伝子の突然変異で色素が失われる「部分白化」という現象だった。白いキジは「吉兆」という。小倉さんに案内され、谷中湖の東側のヨシ原を訪ねた。草が茂り、見通しが悪い。しばらく待つと、白いキジが現れ、幼鳥3羽を連れていた。すでに親の半分ほどに成長している。幼鳥の羽色は褐色で親の影響はない。小倉さんは「1羽いなくなった」と残念そうに話した。雄は見当たらない。その後、縄張り争いが見られた谷中橋付近に戻った。しばらく待ったが、キジは出なかった。その代わり、目の前のヨシ原でチュウヒが飛んでくれた。主に冬鳥として渡来するタカの仲間だ。秋の訪れを感じた。
紙面より一部抜粋(2017年10月12日発行 東京中日スポーツ)
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