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湖畔のオリオン 流星一閃
満天の星空が、静かな池の水面に輝いた。午前2時。中央に3つの星が並ぶオリオン座が東の空から昇った。左上に1等星ペテルギウスが赤く、右下にリゲルが青白く光る。一瞬、航空機の光跡が水面に映った。1時間に数回、流れ星も出現。気温は6度。神々しい秋の星空に魅了された。今月上旬、北八ケ岳の八千穂高原にある白駒池(長野県佐久穂町と小海町)を訪れた。標高は2115メートル。樹齢数百年を越えるコメツガやシラビソなどの原生林の中にある小さな池。特に、水面に映る様々な景観の美しさに感銘した。湖畔には「青苔荘」と「白駒荘」の2軒の山小屋がある。今回は東の空が正面に見られる「白駒荘」に宿泊。すぐ目の前から星空と池を撮影できた。池でスケートする選手の記念写真が玄関に展示されていた。山小屋主人の辰野廣茂さんは「60年前の光景。当時は日本代表選手がスピードスケートの合宿をした」と懐かしい思い出を話してくれた。50年ほど前が最後だった。池の周りを歩くと青いコケのじゅうたんが一面に広がる絶景が見られた。森には485種のコケが生育するという。国内で確認される約1800種の約4分の1に相当する。2008年には日本蘚苔(せんたい)類学会が「日本の貴重なコケの森」に選定した。訪れた初日は雨上がりのため霧に包まれ、美しい神秘的なコケを見ることができた。まもなく紅葉の季節を迎える。例年の見ごろは10月上旬。特にドウダンツツジの赤とダケカンバの黄色が鮮やかという。紅葉が水面を彩る風景を撮影しにもう一度、訪れたい。
紙面より一部抜粋(2017年9月14日発行 東京中日スポーツ)
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