商品概要
つぼみに憩う「宝石」
埼玉県川越市吉田新町の小畔水鳥(こあぜみずとり)の郷(さと)公園で七月二十六日朝、ハスのつぼみに止まるカワセミ。雨の中、ハス池の小魚を狙って、華麗な「お立ち台」に飛来した。雨が激しくなったが、一分ほど水面を見つめ続けてくれた。雨に煙るハスとカワセミが印象的だった。同公園は雨水調節池の周囲を散策路に整備して造られた。周囲六百メートルほどの四角い池の約半分にハスが咲き誇る。散策路から見下ろすようにして観賞する。カワセミの他にゴイサギやアオサギ、コサギ、カワウ、カルガモなどの水鳥が見られた。三年前の八月九日に初めて訪れた。取材メモには「立秋を過ぎて大輪の花は少ない。カワセミ3羽。つぼみに何度も止まった」とある。本紙連載中の「探鳥」に掲載した。その後、毎夏、立ち寄っている。カワセミとハスの光景にはいつも心癒やされてきた。ハスは日が昇ると咲き始め、昼ごろには花を閉じてしまう。花の命は四日間ほどと短い。今回は四日間滞在したが、見ごろは午前六時から九時がベスト。カワセミがつぼみに止まってくれた時間も同じころ。以前は終日止まったが、今年は早朝に限定されて、残念。カワセミは成鳥二羽と幼鳥一羽が見られた。成鳥は小魚をくわえて何度も飛んだ。もしかしたら再度営巣し、ヒナに餌を運んでいるのだろうか。巣立ちビナがハス池に来ることを願った。カワセミ(全長一七センチ)は漢字で「翡翠」と書く。青く美しい姿から「空飛ぶ宝石」ともいわれる。神聖な花とされるハスとの共演は夏の風物詩だ。カワセミは水辺のすぐ上の枝や杭(くい)などから獲物を狙う習性がある。もう少し、この夏も撮影を続けていきたい。
紙面より一部抜粋(2017年8月9日発行 東京新聞)
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