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雲をつかめ!天空の道
夏雲の下、山頂の稜線をぬうように「天空の道」(県道383号)が走る。愛媛県と高知県の県境の尾根に広がる四国カルストを13日、訪れた。標高は1400メートル前後。白い石灰岩が点在する牧歌的な高原と次々に形を変える夏雲が印象的だった。吹く風も心地よい。特に、五段高原からの絶景に魅了された。
四国カルストは秋吉台(山口県)と平尾台(福岡県)とともに日本三大カルストの一つとされる。東西約25キロ、幅約3キロ。石灰岩の大地が長い年月を経て、雨水などで浸食されてできた。久万高原町(愛媛県)や梼原町、津野町(ともに高知県)など5市町にまたがる。西から大野ケ原、姫鶴平(めづるだいら)、五段高原、天狗高原と続く。地表に露出した石灰岩が点在し、乳牛が放牧される。
五段高原の丘の上でひと休みした。赤とんぼの名で親しまれるアキアカネが無数に飛び回っていた。平地で羽化し、夏に涼しい山地で過ごし、秋に平地に戻る。人間と同様に、四国カルストを避暑地として過ごす。天狗高原では草原が広がり、ホオアカが「チョッチイ」と朗らかな声で歌っていた。夏の関東では奥日光・戦場ケ原で見られる野鳥だ。
徳島、高知、愛媛、香川の4県で構成される四国。弘法大師空海ゆかりの霊場八十八カ所を巡拝するお遍路で知られる。空海は四国の大自然で修行して悟りを開いた。四国カルストは巡礼の札所から離れているが、空海が修行した四国の風土を連想させる。四国は平地が少なく、山地が多い。約1200年前、空海は四国カルストに来たのだろうか。石灰岩の岩に座り、空と山を見つめ続けると、何故か心癒やされた。
紙面より一部抜粋(2017年7月27日発行 東京中日スポーツ)
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