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人工の浮島に「ピューイ」
都心から電車に乗って約1時間。栃木、群馬、茨城、埼玉の4県にまたがる渡良瀬遊水地にある谷中湖で5月中旬、200羽を越える旅鳥キアシシギの群れに出会った。新緑の水辺に「ピューイ」と口笛のような澄んだ声が響き渡った。異彩を放つ人工の浮島でひと休みする光景が印象的だった。
かつて、約2500人が暮らす谷中村が同湖とその周辺にあった。足尾銅山鉱毒事件が起き、明治政府は鉱毒沈殿池を造るために同村を廃村させた。その後、広大なヨシ原の低層湿原に。28年前、洪水調節や水道用水などの目的で同湖が完成した。しかし、下流域にあるため、常に水質が問題になり、水質改善の目的で人工の浮島が造られた。
この浮島に5年前の5月、250羽以上のキアシシギの大群が渡来した。「過去に例がない数」と野鳥ファンは珍しい光景に驚いた。その後も毎年5月に約2週間滞在する。なぜか、この人工物がお気に入りだ。
キアシシギはオーストラリアなどの越冬地からシベリアなどの繁殖地に向かう途中、日本の湿地に立ち寄りエネルギーを補給する。渡り鳥にとって体力を回復できる湿地は国際的に貴重なオアシスだ。全長は25センチ。
7月3日、遊水地が国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に登録されて5周年を迎える。
紙面より一部抜粋(2017年6月8日発行 東京中日スポーツ)
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