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もう一つの太陽にカモメ翔く
春はあけぼの。厚い雲と大海原の間に紫の帯が広がり、鳥居の中の水平線から日が昇ってきた。すぐ上に、ぼんやりとした赤い円が輝く。雲に日の光が反射しているのだろう。太陽が2つあるようだ。カモメの仲間が一瞬、もう1つの太陽を横切った。
日本を代表する日の出スポット「神磯(かみいそ)の鳥居」(茨城県大洗町)を3日に訪れた。大洗磯前(いそさき)神社の鳥居のひとつで、岩礁に立っている。真東を向いており、太平洋から昇る太陽に照らされる姿は神々しい。初日の出は大勢の参拝客でにぎわう。水戸黄門としておなじみの水戸藩二代目藩主・徳川光圀公は、この地の景観をたたえる歌を詠んでいる。
17年前、東京新聞の写真企画「海回廊を行く〜関東沿岸1300キロ」で数日間、この鳥居を取材した。数多く撮影したが、鳥居と流れ星、満天の星の写真が採用され、日の出の写真はボツに。今回は雪辱を果たそうと挑んだ。当時は夜間撮影する人に出会わなかったが、今は必ず数人は見かける。日の出を狙う人も多い。デジタルカメラが普及し、写真が身近になったと感じた。
2日間滞在し、昼間は近くの涸沼(ひぬま)に。この沼で3月中旬、カオグロアメリカムシクイという北アメリカに生息する小鳥が、日本で初めて確認された。全長は13センチほど。全国から連日、100人を超す野鳥ファンが集まった。レンズを向けるが、ヨシの茂みに隠れ、動きが素早い。黒い顔と黄色い胸が、かろうじて1枚だけ写っていた。
紙面より一部抜粋(2017/04/27発行 東京中日スポーツ、2017/04/14発行 東京新聞)
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