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希少種 干潟に舞う
のどかな三月下旬の東京湾で、世界的な希少種、クロツラヘラサギ=写真(下)=とヘラサギ=同(上)=が舞った。都立葛西海浜公園(江戸川区)で、二羽は二年続けて越冬した。二シーズンとも同じ個体か明確でないが、仲の良い様子は似ている。
早春から西なぎさに飛んでくる回数が増え、連日多くの野鳥ファンが訪れる。黒いへら状のくちばしを海水に入れ、左右に振って小魚などを捕獲。大きな魚に驚いたのか、突然ジャンプした瞬間、しぶきが飛び散った。
クロツラヘラサギは東アジアのみに生息し、数は三千羽ほど。環境省レッドリストで、絶滅の危険性が高い「絶滅危惧IB類」に指定されている。目先がヘラサギより黒い。全長は七五センチ。ヘラサギもリストに入るが、カテゴリーは「情報不足」。くちばしの先に黄色みがある。全長は八五センチ。ともにトキの仲間で、朝鮮半島や中国方面から、九州、沖縄などに少数が冬鳥として渡来する。関東で見られるのは珍しい。
観察は、潮の引きが大きい大潮、中潮のころがいい。干潟が現れ、鳥が餌を狙いやすくなるためだ。二羽は潮が引くと東なぎさから飛来。西なぎさの両端を数回往復することも。驚かさないよう、堤防の上から見守りたい。
餌捕りを終え、水浴びをした後、くちばしで何度も相手の羽をつくろいあう光景が見られた。求愛行動の一つだ。異種間のカップルなのだろう。
間もなく夏羽に「衣替え」。冠羽が伸び、胸が黄色みを帯びてくる。昨年の二羽は大型連休のころ北に帰ったという。旅立つ前にあでやかな姿を見たい。来年は幼鳥を連れて三、四羽で来てくれるだろうか。楽しみだ。
紙面より一部抜粋(2017年4月13日発行 東京新聞)
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