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氷瀑 白と黒の競演
厳しい寒さが続き、自然が氷の芸術を創造した。茨城県大子町の袋田の滝。1月27日朝、流れ落ちる滝が凍ってしまう「氷瀑(ひょうばく)」と呼ばれる神秘的な光景に出合った。完全凍結ではなかったが、氷の間を少しだけ水が流れる様に趣がある。黒い岩肌と、真っ白な氷とのコントラストが美しい。
滝の高さは120メートルで、幅は73メートル。岩壁を四段に落下するため、「四度(よど)の滝」とも称される。一方で、平安時代末期の歌僧、西行法師が「この滝は四季に一度ずつ来てみなければ真の風趣は味わえない」と絶賛したから「四度の滝」という説もある。
水戸黄門として知られる水戸藩主の徳川光圀(みつくに)も訪れたと伝わり、華厳滝(けごんのたき)(栃木県日光市)、那智の滝(和歌山県那智勝浦町)とともに、一般に日本3名瀑(めいばく)の一つに数えられる。2年前、国の名勝に指定された。
さらに、NPO法人地域活性化支援センターによって「恋人の聖地」にも選定されている。2段目の滝の中央部の岩のくぼみがハート形に見えるのが、理由の一つだ。残念ながら岩は氷で隠されていた。その代わりか、目前の四段目に氷がハートのような模様を描いているのを見つけ、思わずにっこり。
今冬は五年ぶりの完全凍結も期待された。だが「1月25日から3日間、9割まで凍結した。28日夜8時ごろ、氷がものすごい音を立てて崩れた。2月の結氷は難しいだろう」(袋田観瀑施設管理事務所)という。ならば、次は新緑の春に訪れようか。「四度の滝」なのだから。
紙面より一部抜粋(2017年2月1日発行 東京新聞)
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