商品概要
温泉で育つ苔
強酸性の鉱泉に生育する珍しいコケとして知られるチャツボミゴケ。最近のコケブームで人気が高い。日本最大の群生地が群馬県中之条町のチャツボミゴケ公園(標高約1200メートル)にある。
コケの絶景を求めて9月下旬、同公園を訪れた。秋雨にぬれたコケが、緑一面に鮮やかに広がる。湧き出す鉱泉の幾筋もの流れが、コケの中で模様を描いて神秘的だ。時々漂う湯気のような乳白色のもやと、硫黄の匂いが心地いい。自然がつくる芸術に心癒やされた。
群生地は昭和19年から同41年まで、鉄鉱石が露天掘りされた群馬鉄山で俗称「穴地獄」と呼ばれる。当時、国内2位の生産量を誇ったという。穴の側壁から、強酸性の20度ほどの鉱泉が湧き出す。山の水は冷たいが、鉱泉はぬるく感じる。穴の周囲には木道が整備され、駐車場から穴地獄まで徒歩10分ほど。
鉱山の閉山後は経営していた日本鋼管(現JFEエンジニアリング)の保養所に。4年前、中之条町に無償譲渡されてから、珍しいコケの話題が広まった。昨年5月、コケの群生地は「芳ケ平湿地群」として国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に登録された。同園管理事務所は「訪問者は毎年約3万人だったが、今年は5万人を超えそう」と話す。
コケの色は9月下旬から11月下旬までが特に美しいという。冷え込むと緑色が一段と鮮やかに。紅葉の見ごろは例年10月下旬。そのころ、緑と赤、黄色が織りなすコケと紅葉のコントラストが神秘的な光景を見せてくれる。
紙面より一部抜粋(2016年10月14日発行 東京中日スポーツ)
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