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不思議な電柱
3日夕、千葉県木更津市の江川海岸を訪れた。海の上に立ち並ぶ電柱を撮影するためだ。日没後に電柱は黒さを増し、ブルーな世界と新日鉄住金君津製鉄所の工場夜景にコラボする幻想的な風景が現れた。撮影中に雨が降り出し、工場の灯(あか)りが雨粒でかすれ、一段と幽玄な世界に。
ここは盤州(ばんず)干潟と呼ばれる東京湾に残された最大の干潟。昔からノリ養殖やアサリ漁が盛んで、春から夏は潮干狩り客でにぎわう。電柱はアサリ密漁の監視小屋に送電するため造られた。陸から約1キロ先の小屋まで電柱は約45本。さらに南に電線は1キロほど続く。小屋は今、無人で通電はしていない。
昨年秋、江川海岸は「日本のウユニ塩湖」としてインターネットに広まった。干潮時、干潟に残った大きな水たまりが水鏡になり、天空を映す光景がボリビアにある有名な絶景スポットに似ていると。同時に、映画「千と千尋の神隠し」に登場する海を走る海原電鉄の列車シーンをほうふつさせると話題になった。この2つが今、不思議な場所として人を集める。
撮影に2日間訪れたが、両日とも夕方、大型観光バスが数台立ち寄った。秘境と絶景を楽しむツアーだ。大勢が訪れ、女性とカップル、外国人が目立った。「スタジオジブリの映画のよう」「夕日が美しい」「電柱に胸キュン」と絶賛した。
反対に「どこから写せばいいのですか」と戸惑う人も。干潮時に現れる水鏡は満潮時には見られないからだ。満潮と干潮では風景が一変する。干潟は立ち入り禁止なので気を付けたい。
紙面より一部抜粋(2016年9月9日発行 東京中日スポーツ)
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