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朝焼けに涼し富士の影
猛暑の都会を離れ、群馬県高崎市の榛名(はるな)湖をこの夏訪れた。標高1084メートル。中禅寺湖(栃木県)に次ぎ、日本で2番目に高い場所にある湖だ。水面を吹く風が心地良い。
夜明けの午前5時ごろ、榛名富士(標高1391メートル)の山頂に朝焼けが広がった。赤紫、だいだい、黄と刻々と色を変えていく。上空には秋景色のようなうろこ雲も。山の影と朝焼けが静かな湖面にほんのりと映る。自然の営みがつくる一瞬の美にいつも魅了される。
湖と榛名富士が共演する「逆さ富士」の幻想的な姿は、富士五湖の河口湖と山中湖(いずれも山梨県)と富士山が織りなす光景のようだ。全国には「富士」の名をいただく「ふるさと富士」が350以上あるとされる。中でも榛名富士は、規模こそ小さいが秀麗な姿が本物によく似ている。
榛名湖周辺の複数の火山を総称して榛名山といい、榛名富士はその中央火口丘。山頂までは徒歩約45分、ロープウエーだと約3分。運がよければ、東京スカイツリーと富士山が山頂の展望台から望めるが、この日は視界が悪かった。正午の気温は22度。都心と比べ10度も低く、さわやかだ。
山頂には榛名富士山神社がある。夏の雲を撮っていると、「思い出の場所に30年ぶりに来た」という80代の夫婦に記念写真の撮影を頼まれた。「新聞社のカメラマン」とあいさつすると、「よく写ってる。宝物だ」と喜んでくれた。心がほっこりした。
紙面より一部抜粋(2016年8月26日発行 東京中日スポーツ)
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