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天空回廊に野鳥の美声
梅雨の晴れ間が広がった6月下旬、栃木県日光市の霧降高原を訪れた。標高は1300メートルから1600メートルほど。ここはキスゲ平と呼ばれる急斜面で、ニッコウキスゲの群生地として知られる。野鳥のホオアカが花の上で歌い、ノビタキはひなを連れて飛び交う。花と鳥の楽園に魅了される。
キスゲ平はかつて、日光市営スキー場だった。スキー客の減少などで2004年に閉鎖され、リフトも6年前に廃止に。その後は高山植物の保全活動に取り組み、散策しながら花を楽しむ園地に再生した。7月に入り、ニッコウキスゲはピークを過ぎたが、10日ごろまで楽しめるという。その後はシモツケソウやワレモコウ、オヤマリンドウなどが咲き誇る。
リフトの跡地で異彩を放つのが、「天空回廊」と呼ばれる1445段の木の階段。標高1345メートルのレストハウスから1582メートルの小丸山展望台へ伸びる。標高差は237メートルも。コースタイムは約1時間20分。テレビ番組「ナニコレ珍百景」で紹介されたという。階段から振り返ると北関東の山並みが美しい。空気が澄んだ日は富士山や東京スカイツリーが望めるというが、この日は宇都宮市付近までだった。
夏の霧降高原は高山植物と絶景、天空回廊が大勢の登山者と行楽客の人気を集める。もうひとつ印象的だったのは野鳥の歌声。夜明け前、「トキョキョカキョク」とホトトギス。薄暗い森を鳴きながら飛んだ。朝焼けが広がるとカッコウが鳴き始めた。同時にノビタキやホオアカ、ビンズイ、ホオジロも。絶景と野鳥の共演は夏山の醍醐味(だいごみ)だ。心癒やされる。
紙面より一部抜粋(2016年7月8日発行 東京中日スポーツ)
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