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鳥声と緑響く水鏡
東山魁夷(かいい)の名画「緑響く」のモチーフとして有名な長野県茅野市豊平の御射鹿池(みしゃかいけ)を今月中旬に訪れた。
夜明け前、霧に包まれた白い世界が広がった。次第に霧が晴れ、鏡のような水面に静かな森が浮かんできた。緑と青が描く幻想的な色に思わず身震いした。風が少し吹き、水鏡を揺らした。待つこと1時間余。シラカバとカラマツの森が一瞬、鮮明に映った。まるで名画のような絶景に至福の時を感じた。
同池は標高1100メートルの山あいにある小さなため池。山の冷水を温め、農業用水に使うため1933年に完成。酸性が強く、魚は生息できないという。水面に森がきれいに映る要因だろうか。
有名になったのは2008年、東山魁夷の名画を模して、シャープ液晶テレビのCMに女優の吉永小百合さんと白馬がこの池で共演したことに由来。その後、多くの観光客が訪れ、人気の絶景スポットに。
今、隣接する県道の改良工事が行われ、同時に駐車場をつくる予定だ。同市観光課によると「完成は今年度中で、大型バスも駐車できるように。将来的にはトイレ設置も」と話す。
水面は四季折々に表情を変え素晴らしい景観を見せる。初夏から夏が特に人気という。東山魁夷の名画もその時期の作品だ。池畔で理由を考えた。キビタキやオオルリ、ホトトギスなど夏鳥のさえずりがとても心地良く感じた。この時期は交響曲のように響く野鳥の歌声と緑の風景を同時に楽しめるからだろう。
紙面より一部抜粋(2016/06/24発行 東京中日スポーツ、2016/08/03発行 東京新聞)
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