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春告げるヨシ焼き
栃木・群馬・茨城・埼玉の4県にまたがる渡良瀬遊水地で3月27日、春を告げるヨシ焼きが行われた。午前8時30分、ヨシ原の各所で一斉に火が放たれると「ゴーゴー」と音を立て、ヨシは真っ赤な炎と黒煙を噴き上げた。日本最大のヨシ焼きの絶景に魅了された。
真っ赤な炎の温度は約800度になる。同時に上昇気流が発生し、空からヨシの黒い灰が雪のように降り続いた。火に驚いてキジやヒバリ、ノスリが煙の中を飛んだ。これを機に冬鳥は徐々に北に旅立って行く。
ヨシ焼きの目的は良質なヨシの生育と害虫の駆除、貴重な植物の生態系保全など。例年、1週間後に新芽が顔を出す。最初に出る植物は絶滅危惧(ぐ)種トネハナヤスリとエキサイゼリ、ノウルシなど。その後ヨシが芽生えて、緑が再生していく。
渡良瀬を撮影して25年になる。春を告げる恒例のヨシ焼きはいつも魅了される。以前は中に入れたが、今は立ち入り禁止に。近年の撮影場所は小山市の生井桜づつみが多い。ここは土手に車を駐車でき、目の前にヨシ原が広がる絶景スポット。この日も写真愛好家や家族連れが大勢集まりカメラを向けていた。
ヨシ焼きから1カ月すぎた大型連休のころ、ヨシは腰の高さほどに成長する。オオセッカやコヨシキリ、オオヨシキリなどが、ヨシに止まり盛んにさえずる。ヨシの下には絶滅危惧種の植物がかれんに咲き誇る。晴れた朝には幽玄な川霧も。まもなくヨシ原が一年で一番美しい季節を迎える。
紙面より一部抜粋(2016年4月8日発行 東京中日スポーツ)
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