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湧水染める虹のアーチ
春めく白糸の滝(静岡県富士宮市)を訪れた。富士山の雨水や雪解け水が湧水となり、溶岩の崖の各所から白い糸をたらしたように流れ落ちていた。水しぶきが顔に当たり心地いい。大きく深呼吸をした。マイナスイオンに包まれた至福の時間だ。雲間から光が差し込むと、虹が滝つぼに大きく弧を描いた。鮮やかな光景に魅了された。
白糸の滝は高さ約20メートル、幅約150メートルにわたり馬てい形に広がる。全国的にも珍しい湧水の滝だ。見事な景観は1936(昭和11)年、国の名勝及び天然記念物に指定された。90(平成2)年には「日本の滝百選」にも選定。滝つぼに降りて、水をすくうと気持ち良い冷たさだ。湧水なので水温は年間を通じて約12度という。
富士山麓は数多くの湧水で知られる。山梨側では富士五湖、忍野八海など。静岡側では白糸の滝、猪之頭湧泉、柿田川など。雨や雪など膨大な量の天水は、地表から姿を消し、伏流水となって山麓に湧き出している。水がつくる景観は美しい。
21年前、新聞協会賞を受賞した東京新聞の写真企画「富士異彩」取材班で、富士山の撮影に没頭した。ある日、山頂の雪解け水が噴火口に落ちる「幻の滝」に出会った。日本一の高いエリアの壮大な風景に感動した。その時も鮮やかな虹が弧を描いてくれた。
山麓と山頂で出会った二つの滝と虹。富士山に畏(い)敬の念を抱く絶景である
紙面より一部抜粋(2016年3月26日発行 東京中日スポーツ)
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