商品概要
霧の下に朝の都会
奥武蔵の標高771メートルにある関八州見晴台(埼玉県飯能市)をこの冬、訪れた。冷え込んだ明け方に放射霧が発生し、都心は白い世界に包まれた。朝焼けは色鮮やか。特に東京スカイツリーや高層ビルなどは頭を霧の上に出して印象的。まるで墨絵のような幻想的な景色に魅了された。
この展望台は昔から、関東平野を一望する絶景ポイントとして知られる。その名は関東八州が見渡せることに由来。八州とは江戸時代の安房と下総、上総、相模、武蔵、常陸、下野、上野の8カ国の呼び名。現在の1都6県を指す。
次第に霧が消えると、絶景が広がった。東京スカイツリーは約60キロ先だが、ひときわ目立つ。その奥には東京湾が細長い湖のように見えた。千葉県君津市に立つ工場の煙突群と羽田空港に発着する航空機、横浜ベイブリッジ、ランドマークタワーなどもくっきりと見えた。富士山と丹沢山、筑波山、男体山、赤城山など関東平野を取り囲む山々も美しい。
私の趣味はバードウオッチングで、いつも8倍の双眼鏡を持参する。双眼鏡があると野鳥以外にも遠くの風景が鮮明に見えて楽しい。今回も大いに役立った。野鳥では木の実を食べるイカルの群れが見晴台から30分間も観察できた。
帰りに、見晴台近くの高山不動尊を参拝した。成田不動と高幡不動とともに関東三不動とされる真言宗の寺院だ。654年創建で1360年以上の歴史を誇る。冬の山深い静かな境内を歩くと心が癒やされた。
紙面より一部抜粋(2015年12月12日発行 東京中日スポーツ)
注意事項