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楽園は豊饒な干潟
「ピリー、ピリー」と甲高い声で鳴き、一斉に飛ぶミヤコドリの群れ。心躍る一瞬だ。この秋、干潟で大好物の貝を採食していた時のこと。ハヤブサがハマシギを襲うため急降下し、その瞬間、近くのミヤコドリ約二百三十羽が驚いて飛び回った。海面には晩秋の日差しが輝いていた。
舞台は東京湾奥部にある干潟の三番瀬(さんばんぜ)。千葉県船橋市のふなばし三番瀬海浜公園沖だ。ここは今、日本一のミヤコドリ越冬地として知られる。かつては数少ない鳥で見ることが難しかった。わざわざ定期渡来地の九州の和白(わじろ)干潟まで見に行き、遠くに数羽見て感動したことが懐かしい。
本紙に連載「探鳥」を始めた一九九七年、三番瀬の渡来数は十四羽だった。翌年は二十七羽に。毎年増え続け、二〇〇四年冬は百羽を超えた。初の渡来の記録は一九八六年四月の四羽。それが昨年は約三百五十羽に達した。今年は四百羽を超えるだろうか。増加の理由は、三番瀬が育む貝の豊饒(ほうじょう)さだ。
ここで二種の「みやこどり」が存在する「東京トリビア」を。昔から「都鳥」の雅称で親しまれるのは、実はカモメ科のユリカモメ。東京都の鳥として有名で、姿は白い。本物はミヤコドリ科ミヤコドリ。黒と白の姿でくちばしが長い。二種ともに冬鳥でくちばしの色が赤いのが似ている。全長は本物が四十五センチで少し大きい。
晩秋から冬の三番瀬はほかの水鳥も魅力的だ。特に千羽を超えるハマシギが密集して飛ぶ光景は何度見ても素晴らしい。探鳥は満潮から約二時間後、潮が引き始めて干潟が少し現れたころがベスト。近くで観察できる。
紙面より一部抜粋(2015年11月24日発行 東京新聞)
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