商品概要
秋深き宝永火口
「富士山の初冠雪を観測」とこの秋、テレビニュースが報じていた。平年より11日遅く、昨年より5日早いという。待ち望んでいた雪化粧と紅葉の絶景に心が躍った。かつて富士は企画取材で数多く訪れた懐かしい山だ。今回は異彩を放つ宝永火口周辺に決めた。
宝永火口に行く途中、静岡県裾野市の水ケ塚公園に立ち寄った。標高は約1450メートル。ここは富士山の有名なビューポイント。広い駐車場の各所から斜面に巨大な穴を開けた宝永火口が望める。初冠雪はまるで白いベレー帽のよう。森林限界に群生するカラマツは黄色く色づき、鮮やかな彩りを見せる。富士山の風は冷たく、もうすっかり晩秋の世界だ。
さらに富士山スカイラインを車で約20分登ると、標高2380メートルの富士宮口五合目に到着。気温は7度と寒い。周辺に広がるカラマツの黄葉は色鮮やか。枝は強い偏西風を受けて風下に伸び、旗型樹に。富士の厳しい気象を物語っていた。
宝永火口へは樹林帯の道をほぼ水平に歩いて約30分。荒涼たる大きな噴火口は、まさに絶景。切り立った火口壁の上には赤茶色にそまる標高2693メートルの宝永山が異彩を放つ。1707年の宝永大噴火で誕生した。しばらく、火口の縁に寝ころんで秋の空を見上げた。次々に湧いては消える雲が印象的だった。
富士山スカイラインは11月中旬、二合目分岐からの登山区間が冬季閉鎖に。昨年は11月10日で、一昨年は25日。路面状況で決められる。水ケ塚公園沿いの周遊区間は通年営業。
紙面より一部抜粋(2015年10月23日発行 東京中日スポーツ)
注意事項